■センゴク外伝桶狭間戦記(一) / 宮下 英樹
やるなぁ・・・「センゴク」の裏でこんなに面白いのも描いてるとは。
「桶狭間」をテーマとしているだけあって、物語は今川家と織田家、そして松平家を中心に展開していきます。この1巻は中でも今川義元及び、太原雪斎を中心に描いてます。
やー上手い。もう上手すぎる。以前から、所謂"今川義元"という人物像のあんまりな世間一般認識(その原因は、やはり桶狭間における敗者であったことと、それに関わるエンタテイメント作品での表現の仕方のせい)に、「ちょっとそれはどうなんだ?」と疑問を持っていたのですが、この漫画の義元のアレンジはとても良い。太原雪斎という名軍師はそのままの表現だけど、その雪斎をして「戦国大名にしてやろうと」決意させるほどの神童として描かれ、にも拘らず、所謂世間一般のイメージに近い、何処か不真面目で子供っぽい所も併せ持たせている。
#それがあの常に口をあけて歯を見せている描き方なんだろうが。
#最後にはちゃんと公家っぽい髭を生やして見せたりしてるしな。
でも、その愚かしさと有能さを同居させるという・・・なんとも難しいキャラクターにしてしまっている、見事。おかげで、実は何度読み返しても楽しめていたり。新しい"今川義元"像を存分に楽しめる、というかね。実際、史実でも「今川仮名目録追加」等の制定や、松平家を取り込む外交戦略、そして北条、武田との三つ巴の外交など等、、、雪斎の助けもあっただろうが有能な戦国大名であったことは間違いないと思えるわけで。
#太原雪斎との信頼関係も良く描かれてますね。
次第に成長する義元の案を受け入れたり、しょっちゅう見せる2人の会談などは味がある。
あと、信長の陰に隠れがちなその親・信秀にスポットを当てているのも注目。戦国時代が小氷河期にあった、という説自体も個人的には真新しい説だったけど、その背景を以って「戦国時代とは飢え、飢饉との戦いであった」とし、その上で如何民衆と向き合っていくのが戦国大名だったのか?などなど、描かれているのは戦ばかりではない。
#というか、本編「センゴク」に比べると戦の様子はほとんど描かれていない。
後付の理論ではあるけど、"謀略戦"を中心とした人間模様がメインですね。ま、最後は桶狭間ってことだろうから、そこで「戦」がどの様に描かれるか?が楽しみですが。
★★★★★
文句なし。装丁も高級感あっていいですねぇ。元々帯なんかもとっておく性質なんですが、この巻の帯は表紙裏表紙と同様の扱いがある。
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順番変えちゃったな・・・仕方ない。書きたい時に書く方がいいな。
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